学校でおこる精神的ないじめ問題を考える
10代自殺者の原因は学校問題が最多ですが、実際には家庭・健康問題など、様々な問題が複雑に結び付いています。
特にいじめ問題については、思春期の子供にとっては重要な問題と言えるでしょう。今回は学校の精神的ないじめ問題について、複合的に考えます。
▪️いじめ解決話には生存者バイアスがある。
苛めっ子に殴り返すような仕返しをすることで、苛められなくなったという成功体験を積んだ、という話を聞いたことがあります。
しかしこれは美談で、単なる生存者バイアスな可能性があります。
あらゆる手段を尽くしても、何も変わらなかったという失敗体験から、学習性無力感に陥ってしまった例もあります。
▪️学習性無力感とは
セリグマンの犬とも呼ばれる実験では、犬を以下の2つの部屋に、分けたところ
(実際の実験では3つですが、分かりやすさを重視するため2つとします。)
①電気ショックを、ボタンを押すことで止められる部屋 →電気ショックを、ボタンを押して止めるようになった
その後、電気ショックを、回避できる部屋に移動させる →電気ショックを、回避した
②電気ショックを、どうやっても回避できない部屋 →電気ショックを、受け入れるようになった
その後、電気ショックを、回避できる部屋に移動させる →電気ショックを、回避しなかった
これが人間にも当てはまるということです。
▪️いじめのシステム
「いじめられる側にも原因がある」というような単純合理はあまりに浅はかです。それでも当事者は、いじめを回避する、あるいは受け入れるため、人間のシステムを知る必要があります。
・ドーパミン仮説
幸せホルモンと言われる。いじめ加害者にとって出る杭を打つのは正しい行為であり、正しい行為をするとドーパミンが出る。
・オキシトシン仮説
愛情ホルモンと言われる。仲間意識を強めるが、その分、排他的になってしまう。
・セロトニン仮説
安心ホルモンと言われる。不足するとリスク回避により、同調性が強まる。日本人は先天的にセロトニントランスポーター(5HTT)が少なく、不安になりやすい(97%)。
どれだけ対策しても、人のシステム上いじめをなくすのは、無理だという事がわかります。
▪️いじめが発生しやすい空間
様々な研究結果から、
・共同体主義的な空間
・聖域的な空間
では、いじめが生じやすいことがわかっています。
オキシトシン仮説のように、仲間意識と排他性が比例することを考えてもわかると思います。
これを解決するためには子供側が、同じ顔ぶれでない、いくつかの共同体を選択できる自由を作る必要があります。
学校を気軽に転校できるようにしたり、地域社会に包摂された趣味のサークル、ボランティア、NPOを活用するのもよいと思います。
しかし、このような市民社会の原理を学校に持ち込むことは、選ばれない共同体ができてしまうため、大人側の都合で難しい。
▪️どうにもならないことはある
よく大人は上記のような解決策を明示しますが、子供側が解決策を実行できない、何らかの状況があることを見落としています。
共同体選択の自由で、リスクヘッジをすることを考える、精神的自由がないことを想像できますか?
それは上記の学習性無力感もそうですが、自分のできる全てを尽くしても、結局状況はよくならないことがずっと続くと、全てを放棄してしまう人もいるということです。
また、精神的自由については冒頭の話とも似ていますが、
家庭問題である支配親によるアダルトチルドレン問題や
健康問題である精神病・症状とも密接に関連します。
結局、いじめを受け入れることができるくらいの、教養が必要ということです。そうは言いますが、八方塞がりの人からすれば、そんなの無理って気持ちも分かります。その現実を悲しく思います。