スマイルドーナッツの雑記

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ロボトミーという悪魔の手術から、現在の脳と科学のありかたを考える

ロボトミーという手術をご存知でしょうか。
なんだか、人間をロボットのようにしてしまうというイメージもありますが、ラテン語前頭葉を意味するLOBOと切るを意味するTOMYを、組み合わせたものです。


▪️ロボトミーの始まり
精神科医のエガスモニスはチンパンジー前頭葉を切ると凶暴性がおさまるという実験から、前頭葉視床をつなぐ神経線維の束(白質)を破壊する手術を着想しました。その後は、白質にアルコールを注射する方法、更には、白質をメスで切断する方法と改良されました。

当時から、様々な副作用が報告されていましたが、精神病が外科手術で治るということが注目されました。多くの方がデメリットに対して盲目になってしまったのですね、、


▪️ロボトミーの普及
精神科医のフリーマンは、実験レベルのものを標準化してロボトミー命名し、積極的に手術を広めました。
その後、改良型ロボトミーを考案。電気ショックにより意識を飛ばし、瞼の下から頭蓋骨の薄い部分に、ハンマーでアイスピックを差し込み、そこから前頭葉を破壊するというものです。(なんかヤバくない?)僅か10分足らずの手術になるとこともあったといいます。
その後、エガスモニスがノーベル生理学医学賞を受賞し、ロボトミーは急速に広まりました。


▪️ロボトミー衰退の始まり
しかし、退院後の副作用・合併症や、矯正を目的にした同性愛者や犯罪者への手術など、問題が起こります。それらの実態は小説「カッコーの巣の上で」で告発され、更には映画化されました。

これをきっかけに、人間性を失うほどの合併症を引き起こす、ロボトミーの恐ろしさが広まることになります。


▪️クロルプロマジンの登場
D2遮断薬クロルプロマジンの登場によって、代替が可能であることが分かると、ロボトミーは急速に廃れることになります。クロルプロマジンは、現在では精神病治療薬の換算の基準として用いられています。


▪️精神医療の現状
現在の精神医療は、客観的な診断基準により診断されますが、科学的かと言われるとまだ発展途上だと考えます。
内科のように血液検索やCTなど、ある程度の診断がはっきりするものが多いのに比べ、精神科の脳波やCTは、他の病気と区別をつけるための鑑別診断です。そのため基本的には問診になります。


▪️最近の話
欧米の神経外科では、電気的あるいは磁気的刺激をおこなうことにより治療する脳深部刺激法(Deep Brain Stimulation)へと進歩しています。
また、科学の進歩により、脳への器質的なアプローチもなされています。例えば脳に電極を埋め込み、反応を試みる実験も進行しています。しかし倫理上、実験のためだけに、脳に電極を埋め込むことができないため、データを取るのに時間がかかってしまいます。


▪️どれだけデータを取るのに時間がかかっても
科学は良い悪いではなく、進歩を目的とすることがあります。脳というのは、人の本質を担う特別な器官です。カウンセラー的な言い方をするなら、心といえるかもしれません。

ここで功利主義の考えを判断に加えて考えてみます。分子生物学の発展によりゲノム編集が問題とされていますが、ロボトミーのような悲劇を防ぐには、ゲノム編集と同様に脳についても、人間の尊厳に対して慎重になる必要があると考えます。たとえ回り道をすることになったのだとしても。

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